青野ヶ原のカギアシゾウ類

15.ix.2002



 播磨は溜池が多いところです.特に,演習場とミサイル基地のある低い丘陵地の「青野ヶ原」付近は森も残っていて,そのまわりに溜池が散在し,なかなか良い採集地です.溜池じたいはブラックバスの釣り場となってゴミだらけですけど.

 青野ヶ原付近,小野市の八ヶ池に行ったところ,一角に浮遊物の溜まり場が出来ていて,漂流しているガガブタの表面がかなり食害されていました.掬い上げて見てみると,カギアシゾウ類がしがみついています.あまり採った事がなかったので大喜びでしつこく繰り返し,20匹くらい採れました.そして持ち帰って顕微鏡で見ると.何と2種混じってるではありませんか! 多くは細長い変った形のものですが,寸詰まりのものが数匹います.



八ヶ池の浮遊物

 日本産のこの群に関しては O'Brien et al. (1994) のレビューがあるので,それで同定できます.
 それでいくと細長いのは Bagous buckinghami O'Brien & Morimoto, 1994 になりました.ガガブタから採れてるようですし,今回の採集地と近い加古川市神吉町の馬頭池でも採れてます.特徴ある体形といい,これは間違いないでしょう.
 和名があるのかないのか,バッキンガムカギアシかホソカギアシ,ガガブタカギアシといったところでしょうか.



細長いほうの Bagous buckinghami

 寸詰まりのほうはこれだ!という感じで同定できません.背面にはっきりした斑紋はありません.
 付節がすんなりしているけど中途半端です.第三節は第五(最先端)節と比べるとやや幅広くなっていて,第四節から切れている個体をみると,第三節の先は凹んでいます.検索表的には"subcordate"という状態に該当すると思います.
 なんとなくおとなしい体形に見えるのは,前胸背の張り出しが弱いためで,基半がほぼ両側平行になっています.翅端近くの第五,第十間室合流部はあまり隆起していません.



寸詰まりのほう Bagous sp.





Bagous sp. の頭胸背,腹面,後脚付節

 一回目に行ったのが2002/07/11でこの日に2匹,25日にもう一度行ってもう2匹採れました.
 そうのうち一匹は口吻や翅鞘端の感じが違います.これは三種めなのか? あるいはこれが♂で前のが♀か? まだよく分かりません.
 採るときは泥をまとっている感じで,葉上にいる個体は明るい色に見え,水中の茎や葉裏にしがみついている個体は黒っぽく見えます.体形での区別は現地では案外難しいです.

 ところで Bagous subcordatus O'Brien & Morimoto, 1994 は原記載では北海道遠軽産の♀しか採れてないのですが,福井県産昆虫類リストには載ってます.♂も採れたんでしょうかね.

文献

O'BRIEN C. W. et al. 1994. Systematics and evolution of weevils of the genus Bagous Germar (Coleoptera: Curculionidae) II. Taxonomic treatment of the species of Japan. Esakia, 34: 1-73.[ESAKIAサイト]

沢田佳久